あながち

感想ブログとなるのか、どうか?

ネビルシュートの『渚にて』を読みました

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)


核戦争後の世界が舞台。放射能に汚染された北半球と、汚染された塵が徐々に南半球もダメにしていく状況の中、さまざまな人がやりとりをしていきます。

黄昏のなかで進展といったものはなくあとは日が落ちるのみ、ということがしつこく何度も描かれていき、中盤くらいからは進展がなくても人間はなにもせずにはいられないんだなという気分になっていきます。それは哀愁というよりも人間の業に包まれています。一方で登場人物たちは強く過去に縛り付けられていて、現実にほとんど対応できません。するとどういうことになるかというと、進展というものがないと理性でわかっていてもギリギリまで何か変化の筋がないかと探し続けます。そのあらがいの背後には核戦争へと人間を導いた欲望と縄張り意識の濃い影があったように私には見えました。
終盤ではそのエネルギーもなくなり、ゆるやかに終末がやってきます。人間の気持ちを超えた圧倒的な圧力のなか残るのはささやかな愛情で、人間より放射能に強いであろうとされる家畜への情などです。

全体的にノスタルジーが支配しているのですが、後ろ向きさがまったく感じられないのは、私たちが理解は出来ても実感が決してできない終末=死が作品全体に圧力をかけていて、その先に登場人物たちを押しだしているからでしょうか。